日本アルコール・アディクション医学会

~多様性とともに生きる~

理事長

  今、アディクション(嗜癖)の問題はホットで多様です。アルコールは嗜好品で多くの方達が適正に使用している一方で、乱用・依存症者は絶えません。大麻や覚醒剤は違法であることを誰もが知っていますが、使用はなくなりません。違法性を回避するために危険ドラッグが出現しました。最近は、カジノ法(統合型リゾート整備推進法)の関係でギャンブル障害の問題や、青少年のゲーム使用が社会的な問題となっています。新型コロナ感染症による自宅待機では、世界中でアルコール、ギャンブル、ゲーム使用や、家庭内暴力の増加が問題となりました。ヒトはストレス下では心の癒しを求める一方で、過剰な使用(乱用や依存)と背中合わせの関係にあります。ストレス解消や嗜好のための節度ある使用と、依存、アディクションを分けるものは何なのでしょうか。思えば、人間は、さまざまな依存性物質を、古来から嗜好品、宗教的な儀式、医薬品として使ってきました。その意味では、依存や嗜癖は人間の本質に深く根差したものといえます。

  アディクション(嗜癖)の治療は、現在、大きな転機を迎えています。断酒が唯一の治療目標であった時代から、飲酒量低減(減酒)やハームリダクションという新たな考え方が導入されてきました。また、従来のアディクションの治療モデルは、嗜癖行動さえなければ自立した生活ができる方達を前提としていました。しかし、最近は、そのような考え方だけでは、もともとの弱さや不適応の問題を抱えた方達(トラウマを抱えた人たちや、発達障害やうつ病を持った人たち)には十分に対応できないことがわかってきました。しかし、このようなパラダイムシフト(減酒やハームリダクション)が治療の向上につながるのかどうかは、これからの課題です。日本アルコール・アディクション医学会は、精神医学、内科学、薬理学、法医学、公衆衛生学、心理学、看護学、精神保健学などさまざまな領域の研究者や治療者から構成されています。本学会に期待される役割は、依存・嗜癖の病態解明や治療法開発の研究、社会への啓発活動、将来を担う人材の育成、諸外国との協働(国際活動)、診断・治療ガイドラインの作成、行政への働きかけなど多岐にわたります。日本学術会議においても2017年にアディクション分科会が設置され、アディクションに関する提言や活動が積極的に展開されています。本学会の特徴は、何よりもアディクションの研究、治療にかかわる多くの領域の専門家が集まっていることです。この大きな力を結集してアディクション問題の解決に本学会が中心的役割を果たしていくことが期待されています。アディクションの研究や治療に関心をお持ちの方は、ぜひ、本学会に入会して一緒に考え、活動していきましょう。

日本アルコール・アディクション医学会
理事長 宮田 久嗣

  

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