10 -2 号 ( 2026 年 6 月 )
[目次]
1.巻頭言:「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」 に関する一考察

( 慶応義塾大学医学部衛生学 公衆衛生学 )
2024 年に厚生労働省が初めて「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を発表して2年が過ぎました。このガイドラインは、従来の「節度ある適度な飲酒」という一律の基準から一歩踏み込んで、個人差や状況に応じたリスクを示しました。
よく知られている短時間大量飲酒(一気飲み)のリスク、アルコールハラスメントだけでなく、依存症のリスクを高める不眠を解消するための飲酒、体調不良時や病気療養中の飲酒の危険性、入浴前・入浴中の飲酒、激しい運動前の飲酒などにも、警鐘を鳴らせた意義は大きいです。また高齢者では体内の水分量の減少や代謝機能の低下によりアルコールの影響を受けやすく、認知症や転倒のリスクが高まることも記載されました。アルコールフラッシング反応にも着目し、ALDH2 の非活性型のアリルを持つ場合、少量の飲酒でも食道がんや頭頸部がんのリスクが高くなることが書かれています。
飲酒と疾患については、国内の研究結果の一覧が示され、疾患ごとにリスクを上昇させる飲酒量が示されています。しかし国内のエビデンスは多くないため、虚血性心疾患・心筋梗塞のように「研究中」で数字が示されていないものもあります。この疾患はもともと欧米で「J カーブ効果(少し飲酒したほうが全く飲まないよりもリスクが低くなる)」を示していた主要疾患であり、最も検証が必要な疾患です。他の疾患についても有意差の有無にかかわらず、もっとも飲酒量が低く示される閾値を提示する安全策が採用されており、WHO で示されているlower the better の指針になるべく合わせようという努力が垣間見られます。もちろん近年の国際的な大規模メタアナリシスから示されたlower the better の考え方は問題ないのですが、国内の研究はまだ乏しく日本人での研究のエビデンスをさらに蓄積していく必要があります。
またこれが実社会においてどこまで浸透し、国民の行動変容に結びつくかという現実的な視点に立つと、いくつかの課題が浮かび上がってきます。行動変容をさせるには何らかのモチベーションが必要です。そのため現実的な視点としては、まず特にリスクの高い飲酒者を選別し、他との比較という視点で節酒指導を優先的に行うような選択と集中が必要です。がんの場合は前述のフラッシング反応を示す者ということになりますし、循環器病の場合は、高血圧や蛋白尿、γ―GTP の上昇を伴う飲酒は、少量であってもリスクが高まることが知られています。
現状では、現実離れした厳しい指針は、かえって「どうせ守れないから無視しよう」という心理的あきらめを生み、ガイドラインそのものの形骸化を招く恐れがあります。現時点ではまずハイリスク者に焦点を当てたハイリスクアプローチを徹底すべき段階であり、それが普及してからlower the better を普及させるポピュレーションアプローチを進めることが妥当だと考えます。
2.2026 年度学術総会のご案内

( ことに白坂メンタルクリニック )
2026 年度アルコール・薬物依存関連学会合同学術総会の一般演題募集のご連絡
2026 年10 月9 日(金)から11 日(日)までの3 日間、札幌コンベンションセンターにて、「アルコール・薬物依存関連学会合同学術総会 HOKKAIDO」を開催いたします。
今回「日本アルコール・アディクション医学会」の大会長を拝命させていただきましたが、芦澤健大会長率いる「日本アルコール・嗜癖関連問題学会」と合同開催、さらに、宮田久嗣先生を大会長に迎えた「The 1st Congress of Asia-Pacific Society of Harm Reduction and Addiction」も同時開催として、国内外3つの学術総会が一同に集う大変貴重な機会となっております。
現在、国内・国際あわせて50 を超えるシンポジウム企画をいただいており、多くの先生方・関係者のみなさまから温かいご支援を賜っておりますこと、心より御礼申し上げます。
今回のシンポジウムについても、看護学、基礎医学、公衆衛生学、心理学、精神医学、内科学、法医学と様々な分野から複数の魅力的なシンポジウム内容をいただいております。内容もアルコール依存、薬物依存、ゲーム行動症、行動嗜癖など、基礎から臨床まで包括的な内容で企画されております。
また、2026 年4 月27 日から6 月15 日までの期間で、一般演題の募集を行っております。臨床、研究、教育、地域支援、多職種連携、ハームリダクションなど、幅広い領域からのご発表を歓迎しております。
秋の北海道で、依存症医療と支援のこれからをともに語り合えることを、心より楽しみにしております。多くのみなさまのご参加・ご応募をお待ちしております。
- 日 時
- :2026 年10 月9 日(金)〜11 日(日)
- 会 場
- :札幌コンベンションセンター
- メインテーマ
- :「引き継がれる依存症治療〜変わっていくこと、変わらずにいたいこと〜」
3.施設紹介:用賀きくち内科肝臓・内視鏡クリニック

( 用賀きくち内科肝臓・内視鏡クリニック )
ロボットが動き、肝臓を通して全身を管理する未来志向型クリニック
“緩衝地帯Buffer Zone”に根を張るクリニックを目指す。マングローブは淡水と海水が交じり合う『汽水域』という特殊な環境でしか生きられず、二酸化炭素の吸収力に優れ、多くの生き物を育み、災害時には防波堤の役割を果たします。まさに、地球環境・生態系・人間社会に深く関わる「境界の象徴」とも言える存在だと知りました。
2 年前、母校である慶應義塾大学の卒業25 周年記念で卒業式に出席した際、伊藤公平塾長が、そのマングローブの生育域を『Buffer Zone』と例えられ、『環境問題や国際的な対立において、こうした”境界”の重要性に目を向けるべきだ』と話されました。その瞬間、私の中で、医療の世界にも全く同じ構造がある、と感じました。
健康診断と、病気になってからの保険診療との間には、十分に対応が届かない“隙間”が存在します。健診で異常を指摘されても、病気と診断されなければ放置されている現状があります。私たちのクリニックは、まさにその”医療のBuffer Zone”にしっかりと根を張る存在でありたい。マングローブのように、異なる領域の境界に立ち、力強く地域の皆様の健康を支える場所でありたい。その想いが、開業を決意させた最大の理由です。
アルコール診療においても同じことが言えます。強く禁酒を迫る専門医と、アルコール診療を遠ざけたがるプライマリケアの間にはBuffer Zone があり、行き場を失った多くの患者さんがいます。アルコール診療をより患者さんの手の届きやすい環境におくには、アルコールを通して全身管理できるシステムを作ることが重要であると考えました。当クリニックは、専門領域である肝臓の状態をいち早くつかむためにFibroScanという機器で、肝臓の線維化や脂肪化を定量的に測定します。採血は迅速生化学測定器を用いて10 分で結果を出し、体成分組成計で体重、筋肉量、脂肪量を身体部位別に測定しています。超音波や上部、下部内視鏡検査で、がん病変を含む病態や疾患の拾い上げに尽力しています。身体への影響をしっかり管理することでアルコール診療に対する意識が向上すると考えています。これは、アルコールに限った話ではなく、生活習慣病管理などを含めても同じだと思います。
さらに、昔から気になっているのが、アルコール診療における飲酒量の把握です。アルコール飲料が多岐にわたり、患者さんも過少申告しがちな中で、飲酒量を正確に把握することは困難です。そこで、当院はクリニック内で運営するロボットにアルコール飲酒量を問診させようと考えました。ロボットならば、患者も気軽に入力でき、より正確に飲酒量がつかめる可能性があると考えています。
将来の健康を患者やロボットと共に考え、管理していく。未来志向型クリニックの実現に向け奮闘しています。是非、お困りの症例がございましたら、お声掛けいただけたら有難いです。用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニック、是非、宜しくお願い致します。
4.研究室紹介:国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所

( 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 )
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部は、心理社会研究室(室長: 嶋根卓也)、依存性薬物研究室(室長: 富山健一)、診断治療開発研究室(室長: 高野歩)という3 つの研究室から構成されています。
心理社会研究室では、薬物乱用の実態や薬物使用者の背景を明らかにすべく、一般住民、中学生、高校生、薬物関連精神疾患患者、ダルク利用者を対象とした実態調査を行い、その研究成果にもとづいた政策提言を行っています。近年では、市販薬乱用の拡大、深刻化に伴い、チェーンドラッグストアにおける市販薬販売の実態調査や薬局薬剤師対象研修資材の開発も行っています。
また、依存性薬物研究室では、薬物の毒性・依存性を明らかにするために行動薬理学研究を行っており、政府の薬物規制施策における重要な基礎資料を提供するとともに、最近では、その化学構造同定技術を生かし、下水疫学的研究にも着手しています。
診断治療開発研究室では、従来行ってきた、依存症集団療法(通称「SMARPP」)や薬物依存症者家族の支援プログラムの開発と普及に加えて、市販薬・処方薬依存症患者や、トラウマを抱えた女性に特化した治療プログラムの開発を行い、その成果にもとづいて診療報酬改定要望を出すなどの政策提言も行っています。
当研究部の特徴は、こうした疫学・基礎的・臨床研究を実施するだけではなく、同じ国立精神・神経医療研究センターの病院部門と協力し、薬物依存症センターとして活発に臨床活動を展開している点にあります。これは、開発した治療法をすみやかに臨床現場に還元するとともに、臨床現場で発生した疑問を疫学・基礎・臨床研究に反映するという、「研究」と「臨床」とのダイナミックな循環を活性化することを目的としています。同センターには、病院部門と当研究部に所属する研究者から、医師、看護師、心理士など総勢50 名近い多職種チームが共同して、高度な専門医療を提供しています。
国立精神・神経医療研究センターは、厚生労働省依存症治療・相談拠点機関事業における薬物依存症の全国拠点機関、また、東京都薬物依存症治療拠点病院にも指定されており、当研究部はそのいずれにおいてもその要として運営に携わっています。
以上のような研究・臨床活動によって得られた知識と経験を、年8~10 回実施している医療関係者、保健行政関係者、地域支援従事者を対象とした研修会を通じて広く還元するとともに、様々なメディアへの出演や取材対応を通じて社会にも情報発信しています。
その意味では、当研究部は小さな部門ではありますが、基礎から臨床、さらには教育・研修、社会に向けて情報発信などの活動の幅はきわめて広範です。そして、「基礎から臨床へ、そして、臨床からの新たなリサーチクエスチョンの発見へ」という好循環のなかで研究活動を展開する研究部であると自負しています。
5.読み物:アルコール依存症の診断と治療に関するe-learning 研修の内容と変更点について

( ケイアイクリニック )
アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン(2018 年)において、飲酒量低減治療はアルコール依存症患者を断酒に導くための中間的ステップあるいは治療目標の1 つとして位置づけられました。
また、2019 年に飲酒欲求を抑える薬剤であるナルメフェン(商品名 セリンクロ®)が上市され、薬物療法による飲酒量低減治療が選択肢として加わりました。しかし、発売の際に厚労省・保険局・医療課長の留意事項が発出され、薬剤料算定のためには、医師、看護師、臨床心理士、精神保健福祉士などが約20 時間の「重度アルコール依存症入院医療管理加算の算定にあたり医師等に求められる研修」を受けることが求められ、処方がなかなか進まない状況にありました。
日本アルコール・アディクション医学会と日本アルコール関連問題学会は、会員の教育目的のための「アルコール依存症の診断と治療に関する e ラーニング」を作成し、このe ラーニングの受講によるナルメフェン薬剤量算定に必要な適切な研修と認めてもらうように厚生労働省と協議してまいりました。その結果、精神科領域の各学会ならびに日本消化器病学会、日本肝臓学会の意見を基に内容を改訂し、新たに日本肝臓学会および日本アルコール・アディクション医学会が主催する「アルコール依存症の診断と治療に関する e ラーニング研修」を作成し、関係学会の賛同も得たことから、この研修が重度アルコール依存症入院医療管理加算の算定にあたり医師等に求められる研修に準じたものであり、薬剤料算定に必要な研修として認められ、2022 年11 月から本 e ラーニング研修がスタートしました。
本 e ラーニングは従来からの断酒治療だけではなく、飲酒量低減という新しい治療目標や新たな視点による心理社会的治療、薬物療法、アルコール関連問題等を踏まえた内容です。
この度、2025 年12 月に本 e ラーニングの内容を一部改訂しました。その大きな理由は、飲酒量低減治療補助アプリ(商品名 ハウディ®)が 2025 年 9 月保険収載されたことと、ナルメフェンの市販後調査の結果が公表されたことです。このアプリを使用により、使用しなかった場合に比べて多量飲酒日数が減ることが報告されています。
また、ナルメフェン飲酒前頓用による特定使用成績調査において、1年の観察期間中飲酒量低減治療を一度も中止せずに継続したのは 32.4 %で、これらの症例では飲酒頻度、1日平均飲酒量、多量飲酒頻度、およびDrinking Risk Level が、ナルメフェン処方開始1ヵ月後から減少し、12 ヵ月後まで減少が維持されていました。飲酒量低減治療のセッションを改訂し、これらの情報をアップデートしました。現在の e ラーニング研修の内容と受講時間は以下のとおりです。
| 演 題 | 時 間 | 演 者 |
|---|---|---|
| 1.アルコール問題に関する法令・政策・ガイドライン | 11 分 | 樋口進
(久里浜医療センター) |
| 2.アルコール依存症の概要と診断 | 23 分 | 齋藤利和
(札幌医科大学) |
| 3.アルコールと健康障害(臓器疾患) | 17 分 | 坂本直哉
(北海道大学) |
| 4.アルコールと健康障害(精神疾患) | 9 分 | 齋藤利和
(札幌医科大学) |
| 5.治療目標の選択 | 28 分 | 宮田久嗣 / 吉治仁志
(東京慈恵会医科大学/ 奈良県立医科大学) |
| 6.断酒治療・自助グループ | 25 分 | 宮田久嗣 / 杠岳文
(東京慈恵会医科大学 / 肥前精神医療センター) |
| 7.飲酒量低減治療 | 23 分 | 樋口進
(久里浜医療センター) |
| 8.心理社会的治療 | 13 分 | 堀江義則
(ケイアイクリニック(撮影時 湘南 慶育病院)) |
| 9.心理社会的治療解説動画 | 13 分 |
なお、先述の飲酒量低減治療補助アプリの保険算定もナルメフェンと同様の取り決めで、アルコール依存症に係る適切な研修を修了した医師のみが算定できます。医師に加え、メディカルスタッフにも有害事象(副作用)の説明等が求められ、本 e ラーニング研修を受講することが望まれます。
研修開始から約 3 年経ちますが、医師の受講者数は約4000 名程度に留まっており、推計される依存症患者数に対して、ナルメフェンの処方量も低値に留まっています。患者本人の意思で来院した患者や他疾患の継続治療中に自院で処方患者の場合は、長期の継続治療率が高いことも報告されており、かかりつけ医自身での処方により長期の治療継続率が上昇することが期待されます。
本 e ラーニング研修の受講者数が増えて、アプリ使用やナルメフェン投与が可能な医療機関が増えることが重要な施策となります。まだ受講されていない会員の方は、この改訂を機会にぜひ受講していただきたいと思います。
6.読み物:減酒治療補助アプリHAUDY のこれまでとこれから

( 岡山県精神科医療センター 株式会社CureApp )
アルコール問題では、早期発見・早期介入の重要性が強調されています。その実現には、(潜在的な)患者さんに早い段階で相談しようと思ってもらうだけでなく、相談を受け止められる医療機関や医療者を増やす必要があります。
私がこの課題に強い関心を持つようになったのは、大学院で臨床疫学を学んだ2010 年代後半のことでした。2019 年には飲酒量低減治療薬ナルメフェンが我が国にも導入され、e ラーニングや治療マニュアルも整備されました。飲酒量低減という目標設定は、患者さんが治療を受け始める際の心理的ハードルを下げるうえで大きな意義があったと思います。
一方で、飲酒量低減治療を提供する医療機関や医療者が十分に増えたという実感は乏しく、ナルメフェンの処方も依存症専門医療機関に偏っているのではないかと感じていました。そこで、依存症専門医療機関はもちろん、それ以外の医療機関でも飲酒量低減のための心理社会的治療を提供しやすくする必要があると考えました。その実現の一つの方法として、保険適用される治療アプリの開発を構想し、2020 年から株式会社CureApp でプロジェクトを立ち上げました。
2020 年に始まったこの取り組みが、治療アプリHAUDY の保険適用という形で結実したのは2025 年9 月のことでした。実現までに5 年半を要しましたが、立ち上げ当初からご一緒くださった先生方、日本アルコール・アディクション医学会、日本アルコール関連問題学会の先生方、さらに治験調整委員会をお引き受けくださった先生方のご指導とご助力に支えられてここまで来ることができました。もっとも、保険適用はゴールではなく出発点です。真のゴールは多様な医療機関でHAUDY が実際に使われ、患者さんの治療成果につながり、社会におけるアルコール依存症の害が低減することです。
今後、臨床医・研究者としてもこの真のゴールに向かった取り組みに邁進したいと考えています。まず取り組みたいのは、HAUDY がどのような医療機関で、どのような患者さんに、どのように処方・活用され、どのような治療転帰につながっているのかを明らかにすることです。加えて取り組みたいのが、アルコール依存症早期介入の診療報酬化です。治療アプリ開発から保険適用までの過程で、診療報酬に関する折衝を経験できたことは、私にとって大きな学びでした。この学びも活用し、学会の先生方や当事者、家族の皆さんと協働して、数年後の診療報酬化実現を達成したいと考えています。
HAUDY の保険適用を一つの通過点として、これからも臨床・研究・制度の三つの側面から、アルコール問題の治療ギャップを少しでも縮める仕事を続けていきます。今後ともご指導のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
7.JMSAAS 若手の会(ECC: Early Career Community)発 足のご報告

姫宮 彩子(岡山大学学術研究院医歯薬学域)
福田 実奈(京都外国語大学国際貢献学部)
近藤 協子(筑波大学医学医療系)
このたび、日本アルコール・アディクション医学会において、若手会員を中心とした自主的な活動の場である「若手の会(Early Career Community:ECC)」を発足いたしました。本稿にて、その概要をご紹介いたします。
ECC は、アルコール・アディクション領域に関わる若手専門職が、学びと協働を通じて臨床・教育・研究の発展に寄与することを目的としています。この領域は、医療、心理、福祉、司法、教育など、多様な分野にまたがる学際的な領域であり、専門職間の連携や相互理解が欠かせません。その一方で、若手専門職の分野横断的な交流の機会や、気軽に相談できる場が必ずしも十分とは言えない現状もあります。こうした背景を踏まえ、ECC は多様な分野を広く・深くつなぎながら、若手が安心して学び、挑戦し、共に育っていける場をつくることを目指しています。
ECC が活動の理念として掲げているのは、「学び合い・支え合い・発信し合う文化の醸成」、「若手専門職の成長と社会的貢献の促進」、「実践知と研究知の循環」の3 つです。職種や世代の違いを越え、心理的に安全な関係性のもとで対話と協働が進む場づくりができるよう、たとえば職種や立場にかかわらず敬称を「さん」で統一するなど、対等に話しやすい雰囲気を大切にしていきたいと考えております。
ECC には特別な加入・退会の手続きはなく、行事への参加も任意です。アルコール・アディクション領域に関心をお持ちの、概ね45 歳未満、または専門職として概ね15 年以内の方を主な対象としていますが、各種企画等を通じて、より幅広い世代の皆様と交流し、経験や知見を共有しながら学びを深めていきたいと願っております。
2026 年度は、まずECC の理念や活動の方向性を共有することを重視し、学術集会において「シンポジウム兼交流会」を企画中です。ECC の背景・理念の説明、他学会における若手組織の取り組みの紹介に加え、参加者同士がフラットに交流できる場を設ける予定です。今後の活動の土台となる機会にできればと存じますので、ご関心をお持ちの方はぜひご参加ください。あわせて、若手研究者の研究発表を後押しする取り組みとして、学術集会で筆頭演者となる場合の参加費等の一部補助を予定しています。
今後は段階的に、学びの場の企画や若手教育プログラムの展開、共同研究の推進といった活動へと発展させながら、本会の取り組みが学会文化の中に根づいていくことを目指してまいります。ECC の活動が、本学会ならびにアルコール・アディクション領域のさらなる発展の一助となりましたら幸いです。
8.事務局からのご連絡
【年会費支払い方法について】
2025 年度(2025 年8 月1 日~2026 年7 月31 日)ま
での年会費のお支払いがまだの方は、以下の口座まで
お願いいたします。
<会費 振込先口座>
- 銀行名
- :ゆうちょ銀行
- 支店名(店番)
- :109 店(イチゼロキュウ)
- 口座種別
- :当座預金
- 口座番号
- :0008560
- 名義
- :日本アルコール・アディクション医学会
- ヨミ
- :ニホンアルコールアディクションイガッカイ
未納金額が不明な場合は、メールにて事務局までお問い合わせください。2026 年度以降のご請求については、学術総会開催後を予定しております。
なお、定款記載の年度を超えて未納会費がある場合は自然退会となりますのでご注意ください。
<年会費>
- 正 会 員
- 8,000 円
- 学術評議員
- 14,000 円
- 役 員
- 17,000 円
- 学生会員
- 4,000 円
【ご入退会・変更等手続きについて】
周囲に当学会へご興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、是非、本学会へのご入会をお勧めください。
1) 入会について
HP(https://www.jmsaas.or.jp/step/application/)から、入会申込書をダウンロードしてご記入の上、事務局へお申込みください。入会には理事会審査( 1 か月に 1 度)が必要になるため、正式なご入会までには最大 2 か月程度お時間をいただくことがございます。
2) 変更について
ご所属、ご職名などに変更がありましたら、事務局までご連絡ください。
3) 退会について
E-mail で、①フルネーム、②連絡先、③退会年度をご連絡ください。
【連絡先】
日本アルコール・アディクション医学会 事務局
mail : jmsaastokyo[at]gmail.com
【啓発用リーフレットについて】
当学会では「あなたの飲酒が心配です」とした、啓発用のリーフレットを 1 部 30 円で下記印刷所に販売委託をしております。ご希望の方は下記までご連絡ください。
- 会社名 :畠山印刷株式会社
- 所在地 :三重県四日市市西浦 2 丁目 13-20
- 電 話 :059-351-2711(代)
- FAX :059-351-5340
- Email :hpc-ltd[at]cty-net.ne.jp
※学会ホームページにも同様のお知らせを掲載しております。

<ご挨拶>
4 月より事務取扱を東京に移転いたしました(法人登記自体は、今年の総会終了後の登記完了まで京都のままとなっております)。同時に、以前ニコチンフォーラムや依存精神、JMSAAS 法人化の際などに事務局を担当しておりました鈴木めぐみが再度事務局を務めさせていただくことになりました。お久しぶりの先生方、初めましての先生方、至らぬ点も多いかと思いますがどうぞよろしくお願いします。
事務局 鈴木めぐみ
9.編集後記

( 佐賀県医療センター好生館 )
本号をお届けするにあたり改めて感じるのは、依存症を取り巻く社会環境と臨床現場が、ここ数年で大きく変化しているということです。アルコール依存症は依然として我が国の重要な健康課題であり、肝疾患、がん、精神疾患、職場のアルコール問題など多方面に影響を及ぼしています。一方で、近年はインターネット・ゲーム依存症への関心も急速に高まりつつあります。
特に若年層においては、スマートフォンが生活の基盤インフラとなる中で、「便利さ」と「過剰使用」の境界が曖昧になっています。世界保健機関(WHO)がゲーム障害を国際疾病分類に位置づけて以降、国内でも専門外来や研究体制の整備が進み、学校・家庭・医療機関が連携した支援の必要性が強調されるようになりました。アルコール依存症において長年積み重ねられてきた治療と回復支援の知見は、こうした新しい行動嗜癖への対応にも数多くの示唆を与えてくれると思います。
また、アルコール依存症の医療においても、大きな変化が生まれています。従来の「断酒一辺倒」から、減酒を含めた多様な回復目標を支援する方向へと臨床は着実に進化しています。その流れの中で注目されているのが、減酒治療補助アプリである「HAUDY」です。日々の飲酒量や気分を記録し、患者自身のセルフマネジメントを支援するこうしたデジタルツールは、依存症医療の新たな可能性を感じさせます。また、医療従事者向けには、「アルコール依存症の診断と治療に関する e ラーニング研修」のような体系的な学習コンテンツも整備されており、専門医だけでなく一般診療科の医師や多職種に対する教育機会の拡充が進んでいます。
臨床現場では、身体合併症と依存症を統合的に診療する重要性も増しています。その意味で、用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニックのように、肝疾患診療とアルコール医療を実践的に結びつける取り組みは、まさに未来志向型であり、今後ますます重要になると思われます。また研究面では、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部において、薬物依存に関する基礎研究・疫学研究・社会実装研究が精力的に進められています。そこで得られた研究成果が、同施設内の病院部門とダイナミックに連携することで、日本の依存症研究を牽引する存在として大きな役割を果たしています。
さて、こうした最新の知見と実践を共有する場として、今年10 月9 日から11 日にかけて、札幌コンベンションセンターにおいて「2026 年度アルコール・薬物依存関連学会合同学術総会」が開催されます。本大会は、第61 回日本アルコール・アディクション医学会学術総会、第48 回日本アルコール・嗜癖関連問題学会を中心に、国際学会も併催される大規模な学術集会であり、大会テーマは「引き継がれる依存症治療~変わっていくこと、変わらずにいたいこと~」となっています。依存症医療を取り巻く環境が大きく変化する中で、「守るべき本質」と「変化すべき実践」を問い直す、極めて意義深いテーマであると感じます。基礎研究、臨床、ハームリダクション、デジタル医療、多職種連携など、多彩なプログラムが予定されており、世代や専門領域を超えた交流の場となることでしょう。ぜひ多くの会員の皆様に札幌へ足を運んでいただき、熱い議論を交わしていただければと思います。
さらに本学会では、今後の発展を見据えた新たな動きとして、日本アルコール・アディクション医学会若手の会「ECC(Early Career Community)」が発足しました。依存症医療の未来を支える若手医師、看護師、研究者、多職種がつながり、学び合い、発信していくための新しいコミュニティです。依存症医療は決して一人で完結できる領域ではありません。だからこそ、世代を超えた継承と、若手による新しい挑戦の両方が必要なのだと思います。
それでは皆様、札幌の地でお会いしましょう。


10-2号 (2026年6月)
10 -1 号 ( 2025 年 12 月 )