7 – 2 号 ( 2023 年 7 月 )

1.5 年後を見据えたアディクション研究

池田 和隆
(将来構想委員長、
東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野
依存性物質プロジェクト)

アディクション研究の必要性が高まっています。アルコール健康障害対策基本法とギャンブル等依存症対策基本法が成立し、依存症対策全国センターが設置され、ゲーム障害が ICD – 11 で新たに疾患に分類され、日本学術会議から「アディクション問題克服に向けた学術活動のあり方に関する提言」が発出されて、国立精神・神経医療研究センター内にアディクション研究センターが設立されることとなりました。アディクションの科学的解明とアディクション問題への科学的対処の必要性が今まさに高まっていると言えると思います。

JMSAAS 将来構想委員会では、2 度にわたる会員アンケート、他の委員会との調整、委員会内での検討などを基に、JMSAAS が上記のニーズに対応できる学会となるよう、若手登用、財務改善、国際化、事務局一本化、機関誌改革、ペーパーレス化などを提案してきました。その多くが理事会や学術評議員会で承認され、各担当委員会で実施していただいています。学会は社会のニーズや制度変更に合わせて改組・改革していく必要がありますが、JMSAAS は、今までも 3 学会の統合や法人化などをしっかり進めてきましたので、上記の取り組みも成功することと信じております。差し迫った今の問題の解決に目途がついて参りましたので、将来構想委員会の本来のミッションである将来構想の検討にも着手できるようになりました。遠い将来のことも見据えて学会活動をしていくべきでしょうが、まずは、5 年後の JMSAAS がしっかりと役割を果たせるために今なすべきことの検討が JMSAAS にとって極めて有意義であるように思います。神田先生が年会長を務められる本年 10 月の岡山での学術総会で、この巻頭言のタイトルでもある「 5 年後を見据えたアディクション研究」をテーマとしたシンポジウムを開催いたしますので、ぜひ多くの参加者の皆様とディスカッションしてより良い構想を立案できればと思っております。

5 年後の発展のためには、基礎と臨床を含む多専門領域の連携、多職種の連携、また、国際連携が必須だと思います。アディクション研究は極めて学際的で、医学にも脳科学にも収まりません。純粋な基礎研究も必要ですし、臨床現場に根付いた研究も必要です。アディクション研究の最先端である米国では、薬物乱用研究所 ( NIDA ) とアルコール乱用・依存症研究所 ( NIAAA ) があり、関連する研究所として精神保健研究所 ( NIMH ) もあり、アディクション関係の研究規模は日本の 300 倍以上です。米国をはじめとする諸外国や国際学会との連携は、直ぐにでも強化すべきことと思います。米国の RSA ( Research Society on Alcoholism ) や CPDD ( College on Problems of Drug Dependence )、国際学会である ISBRA ( International Society for Biomedical Research on Alcoholism ) や ISAM ( International Society of Addiction Medicine ) と比べても、JMSAAS はより総合的にアディクション関連問題に取り組む体制が取れていると思います。JMSAAS の強みを生かせば、国内外のアディクション研究の発展に寄与し、アディクション問題の解決に貢献できると思います。会員の皆様のご研究の一層のご発展を願っております。

2.2023 年度学術年会のご案内 (神田秀幸)

神田 秀幸
(岡山大学学術研究院 医歯薬学域公衆衛生学)

2023 年度学術年会である第 58 回日本アルコール・アディクション医学会学術総会を、本年 10 月 13 – 15 日岡山コンベンションセンターにて開催させて頂くにあたり、大会長としてご案内申し上げます。本学会はこれまで同様、日本アルコール関連問題学会(堀井茂男大会長)と共同で開催し、2023 年度アルコール・薬物依存関連学会合同学術総会として運営させて頂きます。

本総会の合同テーマを「依存症・アディクションに向き合う未来-コロナ禍を超えて-」と致しました。新型コロナウイルス感染症の世界規模の流行、いわゆるコロナ禍によって、私たちの生活や価値観は大きく変化しました。依存症やアディクションの問題も、コロナ禍により表出してきた面もありました。そして、コロナ禍を超越した時代を皆さんとともに、新しく描いていきたいという思いがあります。また、心の時代ともいわれる 21 世紀において、依存症・アディクションは新しい局面を迎えています。依存症・アディクションに向き合う未来を語り、希望ある学術総会にしていきたいという思いを、大会テーマに込めています。

本学会の特徴である、従来の学問領域にとらわれない、学際的なアプローチを知ることのできる機会として、大いに活発な議論を展開して頂ければと思っています。基礎研究から臨床、社会医学、国際協力まで幅広く取り上げる予定です。企画内容も、アルコール・薬物・タバコのみならず、多職種連携、産学連携、e スポーツなど今日的課題もプログラムに盛り込んでいます。多彩なテーマに対して、新たな時代のアディクション研究に扉を開く岡山大会にしたいと切に願っております。

研修教育の機会として、日本精神神経学会における精神科専門医制度、日医認定産業医制度研修会、日本臨床心理士資格認定協会更新ポイント、日本作業療法士協会生涯教育制度基礎ポイントなどをご用意し、生涯学習・自己研鑽の場としてご活用頂きたく準備を整えています。

また、学会の合間には、日本三名園のひとつである後楽園、その近くには改修を終えリニューアルされた岡山城への散策を予定されてはいかがでしょうか。歴史と伝統のある岡山の文化を感じて頂ければ幸いです。学会ではアディクション医学の未来について議論して頂き、歴史と伝統の上に成り立つ未来を実感して頂ければ幸いです。皆さんの心に深く刻まれる学会にしたいと鋭意準備を進めているところです。

開催形式は、現在のところ、対面方式のみとしております。
オンライン対応の無いご不便をおかけしますことをお詫び申し上げる一方で、対面学会の良さを享受して頂ければ幸いです。

晴れの国岡山でお会いできることを楽しみにしております。皆様方の多数のご参加を心よりお待ち申し上げております。

3.2024 年度学術総会のご案内

堀江 義則
(医療法人社団 慶洋会ケイアイクリニック)

この度、2024 年度アルコール・薬物依存関連学会合同学術総会において、第 59 回日本アルコール・アディクション医学会学術総会の会長を務めさせていただくことになりました。日本アルコール関連問題学会との共催で、2024 年 9 月 19 - 21 日に東京都千代田区の砂防会館シェーンバッハ・サボーで開催いたします。統合前の日本アルコール・薬物医学会では、出身医局の慶應義塾大学医学部消化器内科の土屋雅春先生、石井裕正先生をはじめとする諸先輩方が大会長を務められてきました。教室の諸先輩方のご指導も賜り、1990 年に久里浜病院(現 久里浜医療センター)に赴任してから 30 年以上アルコール依存症治療に携わってまいりましたが、ようやくその末席に名前を加えていただいたことは、大変光栄に思います。

また、今年度から本学会の理事長も務めさせていただいております。共催の日本アルコール関連問題学会も理事長の松下幸生先生(久里浜医療センター院長)が大会長を務め、両理事長が学術総会大会長を務めるということで、かなり気合の入った学術総会としたいと思います。これまでアルコール依存症の治療は、重症依存症に対する依存症治療専門医療機関での断酒治療や患者の社会復帰支援などが重要な要素でした。2018 年に作成された新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドラインでは、アルコール依存症の治療として飲酒量低減が治療目標の場合には、その治療を内科やプライマリ・ケアの外来で行い、減酒に失敗した場合や重篤な関連問題がある場合に専門医療機関へ紹介することが推奨されています。アルコール依存症患者の飲酒量を低減させる新しい薬剤である nalmefene が本邦でも 2019 年に上市され、2022 年 11 月からは厚生労働省が指定した e – learning を受講すると薬剤量算定が可能となりました。飲酒量低減アプリの治験も開始されています。このようにアルコール依存症治療の断酒から飲酒量低減へのパラダイムシフトがおきています。しかし、どの段階で飲酒量低減薬を投与するか、動機づけ面接での医療者側の対応はどうするのかなど不確定な要素が多く、常にその治療方針をアップデートする必要があり、そのためには継続的に学術集会での意見交換、討論が重要と考えます。アルコール依存症以外にも、ゲーム依存やインターネット依存などの問題への対応もまだ発展途上と思われます。日本アルコール・アディクション医学会は、精神医学、内科学、薬理学、法医学、公衆衛生学、心理学、看護学、精神保健学などさまざまな領域の研究者や治療者から構成されており、当学会での広い視野での意見を踏まえた討議が、今後の依存症治療の在り方を作るうえで重要と考えます。内科や精神科のみならず、すべての医師の方、コメディカルの方に有意義な学術総会にしてまいりますので、是非、学術総会へご参加ください。

4.優秀論文賞を受賞して

吉本 尚
(筑波大学 健幸ライフスタイル 開発研究センター)

この度は 2021 年の優秀論文賞に選んでいただきまして、誠にありがとうございました。研究に携わった多くの方々、共著者の皆様に感謝いたします。

タイトルは「 Association between alcohol-related injuries and acute excessive drinking patterns in Japanese college students 」というもので、アルコール関連外傷と急性の過剰飲酒パターンとの関連を日本の大学生を対象にして研究したものです。これまで、どちらかと言えばアルコール関連の健康障害の研究は、慢性的に長く飲むことによる健康障害に偏っていたように思いますが、急性の飲酒によって引き起こされる問題も同様に問題と感じておりました。特に大学に勤務していると目にする大学生の飲酒問題は、明らかに急性飲酒によるものが多く、課題を明確にすることが必要と考えていました。

さて、論文の内容ですが、定期健康診断に来た大学生を対象にした無記名自記式質問票を用いた横断調査で、1477 人( 84.1 % )から回答を得ました。平均年齢 22.0( 標準偏差3.1 )歳、596 ( 40.4% )人が女性で、過去 1 年間にアルコール関連外傷を経験した学生は 94 人(6.4%)でした。過去 1 か月間に 2 時間で男性 50 g 以上、女性 40g 以上の飲酒をした経験のあるものをビンジ飲酒者、1 回の飲酒機会で 60 g 以上飲酒した経験のあるものを一時的多量飲酒者とし、年齢、性別、飲酒パターンを調整したロジスティック回帰分析で、ビンジ飲酒と一時的多量飲酒の両方に当てはまる飲み方をする者は、アルコール関連外傷のオッズ比 17.6( 95 % 信頼区間 7.84 – 39.6)、ビンジ飲酒のみはオッズ比 15.6( 同 7.12 – 34.0 )、一時的多量飲酒のみはオッズ比 10.6( 同 3.51 – 32.3 )でした。一方、男性 140 g / 週以上、女性 70 g / 週以上という定期的な飲酒をしていたものは、オッズ比 2.48( 同 1.42 – 4.33 )でした。急性過剰飲酒パターンの中で、ビンジ飲酒と一時的多量飲酒の組み合わせがアルコール関連外傷と強い正の関連があること、ビンジ飲酒のほうが一時的多量飲酒よりもリスクが高いこと、定期的な飲酒はそれほど関連が強くないことがわかりました。

我々の研究はビンジ飲酒と一時的多量飲酒の組み合わせとアルコール関連外傷の関連をみた研究ですが、横断研究であり、因果関係について明確にすることはできません。日本の大学生のアルコール関連傷害を予防するための戦略として、急性過剰飲酒とアルコール関連外傷の因果関係を証明することを目的とした研究、および過度のアルコール使用を減少させる効果的な方法を特定することを目的とした介入研究が、今後必要になってくると思われます。日本に今後訪れる、より一層の少子高齢化社会の中で、若い人の健康を守っていくことの重要性、価値を意識し、研究をより一層推進していきたいと思います。この度はありがとうございました。

5.新役員紹介

法人第三期の役員を紹介いたします。期日までにコメントをいただけた役員については、一言コメントも掲載しております。

理 事 長
堀江 義則
理 事
新井 清美 池嶋 健一 上村 公一
岡村 智教 神田 秀幸 菊池 真大
木村 充 今 一義 白坂 知彦
高野 歩 竹井 謙之 田中 増郎
西谷 陽子 原田 隆之 廣中 直行
舩田 正彦 松本 俊彦 松本 博志
森 友久 山田 清文 杠 岳文
和田 清
監 事
成瀬 暢也 成田 年

【理事長】

堀江義則 (医療法人社団 慶洋会 ケイアイクリニック)

専門分野:
内科学
担当委員会:
総務委員会、学術総会担当委員会、専門医委員会、将来構想委員会、適正使用委員会、アルコール依存症の診断と治療に関する e – ラーニング研修管理委員会

2022 年 9 月から、一般社団法人日本アルコール・アディクション医学会の理事長に就任いたしました。専門分野は消化器内科学で、特に肝臓病です。1990 年に久里浜病院(現 久里浜医療センター)に赴任してから 30 年以上アルコール性臓器障害やアルコール依存症治療に携わってまいりました。
アルコール依存症患者の飲酒量を低減させる新しい薬剤である nalmefene が、本邦でも 2019 年に上市され、アルコール依存症治療の断酒から飲酒量低減へのパラダイムシフトが起こっています。内科外来診療での飲酒量低減治療が重要となってきます。しかし、飲酒量低減治療の試みは、始まったばかりです。 学際的な当学会で、すべての医師の方、コメディカルによる広い視野での意見を踏まえた討議が、今後の依存症治療の在り方を作るうえで重要と考えます。活発な各委員会活動や学術総会での議論を通して、依存症治療がますます発展することを期待します。

【理事】

新井清美 (信州大学 学術研究院保健学系)

専門分野:
看護学(成人看護学)
担当委員会:
広報委員長、編集委員会(査読委員)、若手賞選考委員会、学術委員会、将来構想委員会

この度、理事を拝命いたしました信州大学の新井清美と申します。専門分野は看護学で、研究領域では予防に焦点を当てて、アルコールやギャンブルのリスク判断、アディクションを併存する発達障害者の研究、学生やアスリートのアディクション対策に取り組んでおります。研究班ではアディクションを持つ当事者と家族、児童虐待、更生保護施設や薬物事犯者に関する研究にも携わらせていただき、この問題を取り巻く現状と支援の重要性を実感しております。当学会では広報委員会委員長、編集委員会、学術奨励賞選考委員会、学術委員会、将来構想委員会の任をいただきました。広報委員会ではホームページや SNS 等から JMSAAS 内外への情報発信を行うことで、微力ながら当学会の活動に貢献できればと思っております。ご指導ご鞭撻賜りますようよろしくお願い申し上げます。

池嶋健一 (順天堂大学 医学部消化器内科)

専門分野:
内科学
担当委員会:
国際委員長

上村公一 (東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科法医学分野)

専門分野:
法医学、中毒学
担当委員会:
総務委員会、財務委員会、広報委員会、編集委員会(査読委員)

引き続き、法医学領域から理事を拝命しました。研究はアルコール、コカイン、ヒ素、覚せい剤など、薬毒物による細胞死の研究を行っています。法医解剖実務ではアルコール関連死を扱うことが多く、アルコールは急性中毒による死亡のみならず、アルコール関連の事件・事故は法医学でも重要な研究テーマです。学会が活発に活動するためには、健全な財務基盤の確立が重要です。財務委員会、総務委員会活動を通じて、それを実現することにより、日本アルコール・アディクション医学会の発展に寄与したいと思います。今後ともよろしくお願いいたしします。

岡村智教 (慶應義塾大学 医学部衛生学・公衆衛生学)

専門分野:
衛生学・公衆衛生学
担当委員会:
柳田知司賞選考委員会、広報委員会

神田秀幸 (岡山大学 学術研究院医歯薬学域公衆衛生学)

専門分野:
公衆衛生学
担当委員会:
総務委員長、 副編集委員長、倫理・COI 委員会、学術総会担当委員会、若手賞選考委員会、優秀論文賞選定委員会、学術委員会、将来構想委員会、教育コンテンツ作成タスクフォース委員会

堀江義則理事長より総務委員長にご指名頂きました神田秀幸です。学会員および関係者の皆様よりご指導・ご協力を賜りながら、任に当たりたいと考えております。
学会統合・法人化から時を経て、本学会運営の効率化・円滑化のため京都事務局に一本化しました。会員の皆様にはご不便をおかけする場面もあろうかと思いますが、どうかご理解頂き、事務局運営にご協力頂きますようお願い申し上げます。また本学会の各種委員を担当し、魅力ある学会となるよう知恵を働かせ、精進したいと思います。
また 2023 年度学術年会(岡山)の大会長を務めさせて頂きます。学術総会担当委員会にはご支援ご助言頂きながら、学術総会の運営に当たっております。これまでの学術総会運営を大いに参考にさせて頂きながら、今回の岡山大会の経験を今後の学術総会運営に活かせるよう情報を蓄積していきたいと考えます。
脈々と続く当学会の伝統を継承しつつ、時代に合った展開を視野に学会運営にたずさわりたいと考えております。ご指導、ご鞭撻の程をどうぞ宜しくお願い致します。

菊池真大 (駒沢 風の診療所)

専門分野:
内科学
担当委員会:
広報委員会、医療保険委員会、編集委員会(査読委員)

木村 充 (独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター)

専門分野:
精神医学
担当委員会:
総務委員会、財務委員会、医療保険委員会、編集委員会(査読委員)、若手賞選考委員会

今 一義 (順天堂大学 医学部消化器内科)

専門分野:
内科学
担当委員会:
倫理・COI 委員長,広報委員会、編集委員会(査読委員)、若手賞選考委員会、優秀論文賞選考委員会、教育コンテンツタスクフォース委員会

白坂知彦 (医療法人渓仁会手稲渓仁会病院精神保健科)

専門分野:
精神医学
担当委員会:
学術総会担当委員長、副編集委員長、総務委員会、財務委員会、優秀論文賞選定委員会、国際委員会、将来構想委員会、教育コンテンツタスクフォース委員会、ハームリダクション特別委員会

平素大変お世話になっております。理事を拝命いたします手稲渓仁会病院の白坂知彦(ともひろ)と申します。札幌医科大学神経精神医学講座に所属し、FASD ( 胎児性アルコール症候群 ) モデルを用いた神経幹細胞移植療法における行動変化について研究し、学位を取得しました。臨床では、アルコール依存症などを中心に認知機能とRI を用いた脳血流量の変化、解析、また総合病院精神科における依存症治療の普及活動、行政・教育機関と連携しネット過剰使用の治療・啓発活動に注力しております。また当学会では、総務委員会、財務委員会、学術総会担当委員会、編集委員会、優秀論文選考委員会、国際委員会、将来構想委員会、教育コンテンツタスクフォース、ハームリダクション特別委員会に所属しております。学術総会担当委員会では委員長として毎年の学術総会長と縦断的な情報共有と総会運営に際してのお手伝いをしております。また複数の委員会に所属させていただいており、各委員会間の横断的でシームレスな情報共有を経験する貴重な機会を頂いております。今後とも当学会の発展、プレゼンス向上に貢献するべく努力して参りたいと思っております。今後とも宜しくお願いいたします。

高野 歩 (国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研究部)

専門分野:
精神保健・看護学
担当委員会:
編集委員長、優秀論文賞選定委員長、総務委員会、柳田知司賞選考委員会、国際委員会、将来構想委員会、ハームリダクション特別委員会

この度、引き続き理事を担当することになりました。編集委員長として学会機関誌のオンライン化や査読の迅速化に取り組んでいます。今回から編集委員会は、委員長・副委員長・査読委員で構成されています。本学会は学際的な学会であり、複数の専門分野の様々なテーマの論文、様々な研究手法を用いた論文が投稿されます。各専門分野の論文の査読を、より正確に効率的に実施できるように体制を整えております。また、オンライン化に合わせて投稿規定を改訂し、論文執筆のルールがわかりやすく、投稿のハードルが下がるような工夫を行いました。
会員の皆様からの投稿を心からお待ちしております。

竹井謙之 ( m・o クリニック)

専門分野:
内科学
担当委員会:
柳田知司賞選考委員会、適正使用委員会

田中増郎 (公益財団法人慈圭会 慈圭病院)

専門分野:
精神医学
担当委員会:
専門医委員長、将来構想委員会

西谷陽子 (熊本大学大学院 生命科学研究部法医学講座)

専門分野:
法医学
担当委員会:
教育コンテンツ作成タスクフォース委員長、副編集委員長、広報委員会、学術総会担当委員会、若手賞選考委員会、優秀論文賞選定委員会、国際委員会、将来構想委員会、運転免許更新に係るワーキンググループ委員会

原田隆之 (筑波大学 人間系)

専門分野:
臨床心理学、犯罪心理学
担当委員会:
国際委員会、学術委員会、教育コンテンツ作成タスクフォース委員会

廣中直行 (LSI メディエンス安全科学研究所)

専門分野:
心理学
担当委員会:
財務委員長、総務委員会、学術総会担当委員会、編集委員会(査読委員)、学術委員会、将来構想委員会

所属:LSI メディエンス安全科学研究所のアドバイザーとして新薬の非臨床試験に関わるほか、東京都医学総合研究 依存性物質プロジェクトの客員研究員、東京慈恵会医科大学精神医学講座の非常勤講師として学術研究の世界との関りも持っています。
専門分野:実験心理学を学びましたが自分の主な仕事分野は行動薬理学で、動物実験で中枢神経系作用薬の安全性や薬効を評価してきました。
担当委員会:財務委員長、総務委員会、学術総会担当委員会、編集委員会(査読委員)、学術委員会、将来構想委員会
慢性的な赤字財政から抜け出して健全な財務基盤をつくることと、多くの領域の専門家が結集していますのでその力を存分に発揮して国内外の学会のプレゼンスを高めることを目標として、まずは会員にとって「居心地の良い」学会を作るためのお役に立ちたいと思っています。

舩田正彦 (湘南医療大学 薬学部薬理学研究室)

専門分野:
薬理学
担当委員会:
副編集委員長、広報委員会、倫理・COI 委員会、優秀論文賞選定委員会、若手賞選考委員会、ゲームギャンブル依存特別委員会

この度、薬理学分野より理事を拝命しました湘南医療大学、薬理学研究室の舩田正彦と申します。現在の研究のメインテーマは「物質依存」に関する評価研究です。行動薬理学的手法による実験と薬物受容体発現細胞を利用した実験を通じ、中枢作用、依存性、細胞毒性の評価を行っております。国際的には新規精神活性物質(危険ドラッグ)の流通は依然として継続しており、新規物質の有害作用を迅速に評価するシステム構築は重要な課題となっております。新規物質の危険性に関するデータを集積し、規制のみならず健康被害に対する対策についても進展できるよう情報の発信に努めて参りたいと考えております。物質並びに行動に関するアディクション関連問題への対策は、大変重要な課題となっており、本学会の役割が大きいことを痛感しております。学会の発展のため、少しでも貢献できればと思っております。今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

松本俊彦 (国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研究部)

専門分野:
精神医学
担当委員会:
医療保険委員長

わが国のアディクション対策のなかで最も遅れているのが、治療・回復支援に関する体制整備です。したがって、私は、診療報酬という医療機関における治療提供の根拠を固めつつ、それを起点として地域支援の多様化を推進するお手伝いができればと考えています。また、忌憚なく言わせて頂くと、これまでの当学会は政策提言や社会に対する情報発信が弱かったと感じています。そこで、理事として、社会への啓発を通じてアディクション問題に対する偏見・差別意識の低減に努め、「回復しやすい社会作り」に貢献したいとも考えています。

松本博志 (大阪大学 医学部法医学教室)

専門分野:
法医学
担当委員会:
柳田知司賞選考委員会、学術委員会

森 友久 (星薬科大学 薬理学研究)

専門分野:
薬理学
担当委員会:
学術委員長、編集委員会、国際委員会、教育コンテンツタスクフォース委員会

私のこれまでの研究歴を振り返ると、星薬科大学における薬物依存の研究からはじまり、企業における創薬、法医学における法中毒学、決して短くなかった NIDA / NIH への留学、そして再び星薬科大学に戻り、薬物依存に関わる研究を殆どの期間携わってきました。この間、多くの側面を本学会に育てて頂いたと思っております。私自身、いつまでも若いつもりでいましたが、ふと気づくと定年まで干支にして一回りを欠く年になってきていました。これまで、多くの諸先輩の背中を追ってここまで来ましたが、一方で、1 人獣道を作ってきた感も大いにあります。そんな私が新理事として出来ることは、これから学術領域を支えてくれる若手に研究する楽しさ、知る喜びを感じてもらい、私を含めた諸先輩方の思いあるいは情熱を輪廻していく土壌を醸成する手助けをすることを第一に、語らい、刺激を受け、余韻を残す場を作っていきたいと思います。

山田清文 (名古屋大学大学院 医学系研究科医療薬学・医学部附属病院 薬剤部)

専門分野:
薬理学
担当委員会:
柳田知司賞選考委員長、若手賞選考委員長

杠 岳文 (特定医療法人社団宗仁会 筑後吉井こころホスピタル)

専門分野:
精神医学
担当委員会:
運転免許更新に係るワーキンググループ委員長、医療保険委員会、柳田知司賞選考委員会

和田 清 (埼玉県立精神医療センター)

専門分野:
精神医学
担当委員会:
倫理・COI 委員、柳田知司賞選考委員、学術委員

日本の物質依存問題は質・量ともに欧米諸国をはじめ他国とは大きく異なっています。困ったことに、問題が社会的に小さければ小さいほど専門家が育ちません。同時に専門性が高度になればなるほど領域ごとの相互理解が困難になります。さらに、アディクション領域はともすればメディア情報が専門知見を凌駕してしまう傾向があることに危惧を抱き続けています。これらに対するためにも、多領域からなる本学会の社会的役割は大きいと思います。「参加して良かった」と思う人が増え続ける学術総会を開催し続けることの一助になれれば幸いです。

【監 事】

成田 年 (星薬科大学 薬理学研究室)

専門分野:
薬理学
担当委員会:
柳田知司賞選考委員、優秀論文賞選定委員

成瀬暢也 (埼玉県立精神医療センター)

専門分野:
精神医学
担当委員会:
ハームリダクション特別委員

6.施設紹介 (独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター)

松下幸生
(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター)

久里浜医療センターは、神奈川県三浦半島にあり、野比海岸に面して東京湾が一望でき、療養には恵まれた環境にあります。その歴史は、昭和 16 年に開設された野比海軍病院が戦後に厚生省に移管されて国立療養所久里浜病院となったのが始まりです。その後、病院の名称は、平成 16 年に国立病院が独立行政法人化した際に久里浜アルコール症センターと改称され、さらに平成 24 年に現在の久里浜医療センターに改称されました。

アルコール依存の診療は、昭和 38 年に国立医療機関として初めてアルコール依存症専門病棟が設置されたことから始まりました。専門病棟では入院診療を専門的に行い、3 か月間の入院期間を設定して患者さんの自主性を尊重した独自の治療プログラムが開発されました。このプログラムは、“久里浜方式”と呼ばれ、昭和 50 年から始まったアルコール研修を通して全国に広がりました。昭和 59 年には臨床研究部が設置され、依存症を中心とした診療の他、研究、研修事業が行われるようになりました。

その後、アルコール依存の診療は、内科医師の治療参加による第 1 期(解毒中心)と 2 期(リハビリ中心)のシステム化、性別・年齢別の治療ユニットの多様化、認知行動療法プログラムの導入、大集団精神療法中心から小集団・個人精神療法中心への移行、減酒プログラム(外来)の導入と変化を続けています。また、診療対象となる依存症の領域もアルコールのみならず、平成 23 年にはネット依存、平成 25 年よりギャンブル依存といった行動嗜癖の診療を開始して現在に至ります。

また、研究・研修機関として平成元年には WHO(世界保健機関)から日本で唯一の物質使用・嗜癖行動研究研修協力センターとして指定されるなど、わが国を代表するセンターとしての役割を担うと自負しております。依存症対策では平成 29 年にアルコール健康障害・薬物依存症・ギャンブル等依存症の、依存症対策全国センターに指定され、政府と連携を図りながら、アルコール依存、ギャンブル依存、ネット依存に関する研修事業(人材育成)、情報発信事業(ホームページなど)、調査研究事業を中心に行っております。

ここまでは、依存症を中心に紹介しましたが、当センターには、地域の精神科医療機関としての役割および司法精神医療を推進する役割も与えられております。地域医療として、統合失調症や気分障害など一般の精神疾患診療に加え、神奈川県の認知症疾患医療センターの指定を受け、若年性認知症コーディネーターの設置、認知症初期集中支援事業を含めた認知症性疾患の外来診療、アウトリーチ、入院診療を行っております。また、医療観察法病棟は 2 病棟、52 床を有し、国立精神・神経医療研究センターに次ぐ規模です。

これからも依存症を中心とした精神科疾患の診療、研修、人材育成、調査研究といった分野で役割を果たすよう努めてまいります。今後とも宜しくお願いいたします。

7.研究室紹介

神田 秀幸
(岡山大学学術研究院 医歯薬学域公衆衛生学)

岡山大学医学部は明治 3( 1870 )年設立の岡山藩医学館を礎とし、令和 2 年( 2020 年 )に 150 周年を迎えました。当研究室は、第二次世界大戦後、民主国家における公衆衛生を担うべく、時代の要請により、昭和 29( 1954 )年 7 月、公衆衛生学教室が設置されました。70 年近い歴史をもつ研究室で、これまで衛生学・公衆衛生学分野で国内外に多数の人材を輩出されています。

令和元( 2019 )年 8 月に神田秀幸が第 6 代教授として着任しました。現在の研究室の研究は、インターネット技術と健康管理について取り組んでいます。主に、高校 e スポーツ部部員たちの心身の健康管理や、習慣飲酒等による臓器障害を早期に発見するため IoT 技術を用いた家庭血圧管理研究などに取り組んでいます。

取り組みの柱のひとつとして、高校 e スポーツ部部員たちの健康管理があります。高校 e スポーツは全国大会が開催されるなど大きな広がりをみせている一方で、彼らのもつ心身の健康状態やその管理について未だ詳細な検討がなされていません。
そこで私たちは、高校 e スポーツ部員の身体計測や質問票調査などを通して、彼らの生活状況や心身の状況を把握することを目的としています。ゲームと心身の健康、特に思春期の生徒の健康への影響を明らかにし、その予防のための対策を提言していきたいと考えています。

また、一般住民を対象とした IoT 技術を用いた家庭血圧管理研究では、測定値自動転送機能を搭載した家庭血圧計を用いることで、測定値をインターネット回線を通してサーバへ即座に送信し、そのデータにもとづき、一般住民の家庭血圧の管理状況と家庭血圧変動要因の解明を行っています。飲酒や喫煙など生活基礎調査をふまえ、血圧値および血圧変動への影響を明らかにしていく予定です。喫煙や習慣飲酒等による早期の臓器障害の発見のひとつとして、家庭血圧の状況は重要なアウトカムであり、特に血圧変動に着目した新たな予防医学の視点を持ちます。

研究室の姿勢として、できるだけフィールドワークとして現場に足を運び、現場で得られる clinical question を感じ、research question に展開できる力を育てています。地域の健康課題を抽出しその解決策が考えられる研究教育に取り組んでいます。

新しい時代の公衆衛生学的課題を敏感に察知し果敢に取り組む、進取の気性を大切にします。常に、時代の挑戦者でありたいと思っています。

8.編集後記

新井清美
(信州大学学術研究院保健学系)

ニューズレター 7 – 2 号をお届けいたします。ご寄稿いただきました先生方には心より御礼申し上げます。また、会員の皆様におかれましては、引き続きご助言、ご寄稿いただけますようよろしくお願い申し上げます。
2023 年 5 月 8 日より新型コロナウイルス感染症の感染法上の位置づけが 5 類感染症へと変更になり、行動制限のない新たな生活がはじまりました。そしてニューズレターも 2 点ほど変更がありました。まず 1 点目は、紙媒体での配信からメーリングリストでの PDF 配信と、ホームページへの掲載によるお届けとなったことです。このことでより早く会員の皆様へ情報をお届けできるものと考えております。2 点目は、2023 年 4 月に事務局が一本化されて、ニューズレターの編集・作成を東京事務局から現在の事務局が引継いたことです。
今号は統合された事務局が編集・作成するはじめの号となりました。
7 – 2 号は、アディクション研究と臨床の現在を見つめて将来を考える手がかりが詰まった号となりました。松下幸生先生がご寄稿くださった久里浜医療センターの施設紹介からは、アルコール・アディクション医療と研究のこれまでとこれからをお示しくださっています。また、巻頭言には池田和隆先生がアディクション研究の将来を見据えて JMSAAS が目指す方向性をお示しくださいました。さらに第 58 回日本アルコール・アディクション医学会学術総会(大会長:神田秀幸先生)では「依存症・アディクションに向き合う未来-コロナ禍を超えて-」をテーマに、歴史と伝統のある岡山の地で新たな時代のアディクション研究について意見交換を行います。翌年の第 59 回学術総会(大会長:堀江義則先生)では新たな依存症治療と、学際的な学問領域としてのアディクションを検討し、この領域の発展を推し進めていくこととなるのではないでしょうか。
依存症、アディクションに関連すると思われるニュースが後を絶たず、JMSAAS が社会に果たす役割は益々大きなものとなっております。本学会の強みである学際性を活かして益々社会に貢献できますよう、引き続き会員の皆様からのご厚情ならびにご支援をよろしくお願い申し上げます。